近年、高齢者による犯罪の増加が問題になっており、高齢ドライバーによる危険運転も含めて、社会の高齢化の問題として報道されることが増えています。
しかし、人口の割合的に高齢者が増えているのだから、犯罪を犯す高齢者の数が増えるのは当然であり、実際には昔と変わっていない、高齢者のマナーは昔と大差ないのではないか、と言う人もいると思います。
ということで、実際のところ高齢者の犯罪が増えているのか検証してみました。
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高齢者の犯罪は増えているのか?
- 長期的には高齢者が犯罪を犯す割合は増加している
- 短期的には平成18年をピークに減少している
下のグラフは、60歳以上の年齢層別の刑法犯の検挙人員数の人口10万あたりの割合です。
具体的には
(年齢層別検挙人員数)÷(年齢層別の人口)×10万
という式を使って、値を算出しています。
こうすることで人口の増減や多寡の影響をなくし、年齢層別にどの程度の人が検挙されているのかという割合を見ることができます。
人口が増えれば犯罪を犯す人の割合が同じでも検挙人員の絶対数が増えるのは当然ですからね。
「人口推計」(総務省統計局)(統計局ホームページ/人口推計)
「平成28年度版 犯罪白書」(法務省)(平成28年版 犯罪白書 第1編/第1章/第1節/2) を加工して作成
直近30年の高齢者の検挙人員の比率の推移を調べてみましたが、結果として全体としては30年前と比べて増加しているものの、平成18年をピークに減少傾向にあるということがわかりました。
ただし、平成14年ごろから急激に高齢者の検挙人員が増加しているのは、危険運転致死傷罪の成立が関係していると考えられるため、その影響が無いものと想定すると、増加傾向にあると言えるかもしれません。
下のグラフでは、実際に平成14年から刑法犯の検挙人員が急増していることが読み取れます。
「平成28年度版 犯罪白書」(法務省)(平成28年版 犯罪白書 第1編/第1章/第1節/2) を加工して作成
しかしながら70歳以上の人が犯罪を犯す割合は、最も低かった平成2年と比較すると、現在では3倍以上となっており、70歳未満の人たちとの差も縮まってきていることは注視しなければなりません。
今回の調査では、犯罪の種類別でのデータは考慮していないことに加え、法律の制定・改正や、警察の検挙の方針によって検挙人員は変化するため、一概に高齢者が昔と比べて犯罪を犯すようになったということはできません。また高齢になっても元気であったり、働かなければならないといった環境や社会の変化も影響するでしょう。
ただ30年前と比べても高齢者が犯罪を犯すようになっているのは事実であり、これからさらなる高齢化が待ち受ける中で、特に高齢ドライバーの増加と、それに伴う事故の増加は避けられず、今後も高齢者の犯罪率は増加していくと考えられます。
それがモラルの問題なのか、経済的な問題なのか、身体的な問題なのかはわかりませんが、若者の見本となるような年の取り方をしていきたいですね。